辨 |
品種に次のようなものがあり、栽培する。
アザブタデ(エドタデ) f. angustissima(var. fastigiata)
ムラサキタデ(ベニタデ・アカタデ、芽蓼として用いる) f. purpurascens(var.latifolia)
サツマタデ(ホソバタデ) f. viridis(var.maximowiczii)
ザラツキヤナギタデ f. scabrida
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イヌタデ属 Persicaria(蓼 liăo 屬) については、イヌタデ属を見よ。 |
訓 |
和名タデは、「爛れの義、辛辣をもて口舌の爛るるが如きをいふ」(『和訓栞』)、「其の辛辣(からみ)の手掌(たなごころ)もて人を打つをタテルといふが如く、此ものの味、人の口を疼痛(しびれいたま)しむるが故に命ずといへり」(『成形図説』)などという。また、『日本国語大辞典 第二版』タデの項を参照。
ただし、タデ属の植物のうち味が辛いものはヤナギタデのみ。したがって、たでの語は元来ヤナギタデを指したもの。
「和名柳蓼ハ其柳葉狀ノ葉ニ基キテ斯ク云フ、本蓼幷ニ眞蓼ハ眞正ナルたでノ意ニシテ食料蓼ハ皆之レニ屬シ之レヲ總稱シテたで卽チ蓼ト云ヒ其辛味アルヲたでノ本領トス」(『牧野日本植物図鑑』)。 |
深江輔仁『本草和名』(ca.918)に、蓼実は「和名多天」と、水蓼は「和名美都多天」と。
源順『倭名類聚抄』(ca.934)に、蓼は「和名多天」と。 |
漢字の薔は、薔(ショク・ソク,sè)と読めばタデ、薔(ショウ,qiáng)と読めばばら。 |
種小名 hydropiper は「水生のコショウ」、植物体が辛いことから。 |
説 |
北海道・本州・四国・九州・琉球・朝鮮・臺灣・漢土(雲南以東)から、広く北半球の温帯に分布、河川沼沢の水辺に生ずる。 |
誌 |
茎に辛味があり、食用とする。上記の変種は、みな食用に供する。
本山荻舟『飲食事典』に、「栽培種には真タデ・麻布タデ・糸タデなど概して辛味の強くない青タデが多く、野生の紅タデが最も辛辣である」、「〔タデ酢〕青タデの葉を摘取り少量の塩を混ぜて擂鉢ですり潰した中へ、飯粒少々すり混ぜ、適宜に酢を加えて裏漉したもの。アユその他淡水魚の塩焼に添える」云々と。 |
中国では、全草を辣蓼(ラツリョウ,làliăo)と呼び薬用にする。イヌタデの誌を見よ。 |
『爾雅』に「薔、虞蓼」と、その郭璞注に「虞蓼、澤蓼」と。澤蓼は、ヤナギタデかという。
賈思勰『斉民要術』巻3(530-550)に、「荏蓼」が載る。 |
日本では、『万葉集』に、
吾が屋戸の 穂蓼(ほたで)古幹(ふるから) 採み生(おほ)し
実に成るまでに 君をし待たむ (11/2759,読人知らず)
小児(わらは)ども 草はな苅りそ 八穂蓼を 穂積のあそ(朝臣)が 腋草をかれ
(16/3842,平群朝臣)
みてぐらを なら(奈良)より出でて 水蓼 穂積に至り ・・・
(13/3230,読人知らず。タデは穂が出るので、穂にかかる枕詞)
西行(1118-1190)『山家集』に、
くれなゐの 色なりながら たでのほの からしや人の めにもたてぬは
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蓼の葉を此君(このきみ)と申せ雀鮓(すずめずし) (蕪村,1716-1783。此君は竹の異名)
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